分子マシン②解答編

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前回の記事ではロタキサンを紹介しました

ロタキサンとは、環に軸が貫通した構造を有する分子のことです

特に[1]ロタキサンとは、下図のように環と軸が連結されているものを指すのでした

[1]Rotaxane

ここで、前回同様に某ラボ限定の話をしますが、黄色い軸はベンゼン-アセチレン-ベンゼンという配列を有するトラン骨格であり、青い輪っかは環状分子であるシクロデキストリン(CD)を表しています

このような[1]ロタキサンが形成されるには、下図のような2通りの過程が考えられます

1つ目の最もシンプルな場合、すなわち特に制約がない場合では、トランの尾(Tail)よりも先に頭(Head)からCDの中へ入ります

これによって[1]ロタキサンが形成されます

そして、2つ目のHeadが大きい場合では、その立体障害のため、Headからの[1]ロタキサン形成が起こりえません

ただ、このような場合であっても[1]ロタキサン自体は形成されますので、その過程を前回の出題編で問うていたのでした

解答

本記事は、その解答編となります

Headからでは無理ということで、もうお分かりかもしれませんが、答えはTailからの[1]ロタキサン形成です

ただし、Tailからの[1]ロタキサン形成を正しくイメージするのは難しいため、それを解説します

まず着目すべきは、CDの構造です

CDは、糖である分子6つからなる分子で、その1つ1つのグルコースが回転可能です

これは以下の図から分かるように、グルコース同士を繋ぐ単結合が回転可能であるためです

これは3D概念図で表現すると、下図の通りとなります

(画像のテイストが変わっていますが、これはCDです)

このような過程は、Flippingと呼ばれています

最後に、このFlippingを引き起こしているグルコースに、軸分子が連結していれば、ロタキサン形成につながります

これは下図の通りです

図では、かなり長いトラン骨格を軸分子として用いましたが、TailからCDへ入るため、[1]ロタキサン形成が可能となります

このため、この手法は様々な分子に適用可能であり、ロタキサン構造を得るための優れた手法であると言えるでしょう

皆さんは、正しくイメージできたでしょうか?

もし初見で分かったのならば、かなりすごいことだと思います

最後に、このようなFlippingを介して進行する[1]ロタキサン形成過程を3Dアニメーションにしました

ぜひご覧ください

【引用リスト】

  1. Nishiyabu, R. et al. Eur. J. Org. Chem. 2004, 24, 4985.
  2. Terao, J. et al. Beilstein J. Org. Chem. 2014, 10, 2800.
  3. Masai, H. et al. Chem. Eur. J. 2016, 22, 6624.

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