前回の記事ではロタキサンを紹介しました
ロタキサンとは、環に軸が貫通した構造を有する分子のことです
特に[1]ロタキサンとは、下図のように環と軸が連結されているものを指すのでした
ここで、前回同様に某ラボ限定の話をしますが、黄色い軸はベンゼン-アセチレン-ベンゼンという配列を有するトラン骨格であり、青い輪っかは環状分子であるシクロデキストリン(CD)を表しています
このような[1]ロタキサンが形成されるには、下図のような2通りの過程が考えられます
1つ目の最もシンプルな場合、すなわち特に制約がない場合では、トランの尾(Tail)よりも先に頭(Head)からCDの中へ入ります
これによって[1]ロタキサンが形成されます
そして、2つ目のHeadが大きい場合では、その立体障害のため、Headからの[1]ロタキサン形成が起こりえません
ただ、このような場合であっても[1]ロタキサン自体は形成されますので、その過程を前回の出題編で問うていたのでした
解答
本記事は、その解答編となります
Headからでは無理ということで、もうお分かりかもしれませんが、答えはTailからの[1]ロタキサン形成です
ただし、Tailからの[1]ロタキサン形成を正しくイメージするのは難しいため、それを解説します
まず着目すべきは、CDの構造です
CDは、糖である分子6つからなる分子で、その1つ1つのグルコースが回転可能です
これは以下の図から分かるように、グルコース同士を繋ぐ単結合が回転可能であるためです
これは3D概念図で表現すると、下図の通りとなります
(画像のテイストが変わっていますが、これはCDです)
このような過程は、Flippingと呼ばれています
最後に、このFlippingを引き起こしているグルコースに、軸分子が連結していれば、ロタキサン形成につながります
これは下図の通りです
図では、かなり長いトラン骨格を軸分子として用いましたが、TailからCDへ入るため、[1]ロタキサン形成が可能となります
このため、この手法は様々な分子に適用可能であり、ロタキサン構造を得るための優れた手法であると言えるでしょう
皆さんは、正しくイメージできたでしょうか?
もし初見で分かったのならば、かなりすごいことだと思います
最後に、このようなFlippingを介して進行する[1]ロタキサン形成過程を3Dアニメーションにしました
ぜひご覧ください
【引用リスト】
- Nishiyabu, R. et al. Eur. J. Org. Chem. 2004, 24, 4985.
- Terao, J. et al. Beilstein J. Org. Chem. 2014, 10, 2800.
- Masai, H. et al. Chem. Eur. J. 2016, 22, 6624.
romantik69.co.il
Excellent post. I definitely appreciate this website. Thanks!