分子マシン ①出題編

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ロタキサンという言葉を聞いたことがありますか?

ロタキサンというのは少し特殊な分子で、たいていは人工につくられた分子です

どう特殊かというと、下の図のように、輪っかが軸にはまって抜けないような構造になっている点です

一般的な化合物は、電子の共有などといった、原子同士の直接的な結合で構成されますので、この点が非常に異なります

このように、軸と輪っかの合わせて2個の成分でできているロタキサンを[2]ロタキサンと言います

(青い輪っかには切れ込みが入っていますが、1成分として見なしてください)

輪っかが軸上をスライディングしたりと、単純ではありますが機械みたいな挙動を示すため、分子マシンと言われたりします

[1]ロタキサン

一方で、筆者は最近、[1]ロタキサンを使う機会が多いです

[1]ロタキサンとは成分が1つであることを意味します

ロタキサンの定義上、軸と環がなければロタキサンとして成り立ちませんから、どういうことかと思われるかもしれません

実際には[1]ロタキサンとは、軸と環が貫通しているだけでなく、それらが結ばれている構造のことを指します

軸と環が結ばれているから、成分は1つとして見なすわけですね

構造としては、下のような具合となります

おわかりいただけたでしょうか?

黄色の軸が、青色の輪っかとオレンジ色のヒモを介してつながっています

ここで、某ラボ限定の話をすると、軸である黄色の六角形二つは、ベンゼン環二つがアセチレンを介して連なったものをイメージしており、「トラン」とか「フェニレンエチニレン」と呼びます

加えて、環である青色の6つのユニットは、グルコース骨格が6つ連なったものをイメージしており、シクロデキストリン(CD)と呼ばれます

構造式で正しく書くと、以下のようになります

トランとCDの[1]ロタキサンはどうやって形成される?

これは一応、根源的な問いです

単純に、軸が輪っかを通ればよい、と思うかもしれません

[2]ロタキサンの場合は、それが簡単にイメージできそうです

では、[1]ロタキサンではそれをどうイメージしますか?

[1]ロタキサンが形成される前の状態を見てみましょう

あなたなら、この分子の結合をどうひねり、どうやって輪っかに軸を通しますか?

一番最初に思いつきそうなものとしては、下に示す通りだと思います

ステップI.このようにオレンジ色の単結合部分を180度回転させて

ステップⅡ.トランの”頭側から入る”という描像です

これはもちろん、正解の一つです

では、次の例です

あなたは、この「頭が大きいトラン」をどうひねって[1]ロタキサンにしますか?

(黄色いトラン骨格の、CDと結合していない側を”頭”と呼んでいます)

さっきの方法を使おうとすると、ステップⅡのところで、頭がつっかえてしまいそうです

すなわち、その方法では[1]ロタキサン形成が困難なわけです

しかし、実際にはこのような構造でも[1]ロタキサンは形成できます。

今回の記事はここまで

読んでくださり、ありがとうございました。

解答編は次回の記事とします。

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