結論からいうと、テンセグリティのヒモ部分も含めた「完全な3Dプリント」は難しいため工夫が必要です
なぜ難しいか
完成予想図を上のようにデフォルメしたとしましょう
これをダイレクトに3Dプリントすることを考えたとします
まず前提として、3Dプリントする上では鎖同士が余裕をもって連なっていないといけません
仮に、鎖同士に余裕がなく、最初から引っ張られているような状態だったとすると、造形時に互いにくっついてしまうからです
ですから、上の図のように、鎖は余裕をもって連なっていることが前提条件となります
そこで、緩めの鎖でそのまま印刷してみるとします
今度は、上の図のようなことが起こります
天井が重力によって下に落ちようとすると、中央の鎖は下に引っ張られます
ところが、両側の鎖は引っ張られずに、むしろさらに緩むことになります
この原因は、天井のついている位置関係が「中央の鎖」と「両側の鎖 」では真逆であることによります
すなわち、中央の鎖は天井が下側に接続されている一方で、両側の鎖は天井が上側に接続されています
これによって、中央か両側かでは張力方向も真逆になります
したがって、このように中央の鎖が緩んでしまうと、両側の鎖は張力を失い、構造の崩壊につながります
これではテンセグリティになりません
最初から中央の鎖も、両側の鎖も張力をもっていることが望ましいのですが、これは上述した3Dプリントの前提に反しています
だから3Dプリントでダイレクトにテンセグリティを作ることは難しいのです
解決策
両側の鎖の緩みが問題となるなら、そもそも天井と両側の鎖との接続を断ち切ってしまえばいいのです
この構想は上の図に示した通りです
ただ、断ち切ってしまうだけだけだと、天井と接続できないということが問題になりますね
だから今度は、天井部分に鎖をつなぎとめられるような爪をつけることが鍵となります
このとき、図のように天井部分がくりぬかれていれば、鎖は鉛直な方向性を保ったまま天井と接続することができます
そこで、実際にBlenderでモデリングしたものがこちらとなります(下)
感想:3Dプリント、めちゃくちゃ難しそう
しかし物は試しと言いますから、とりあえず取り組んでみました
まずモデルに対してサポート材をとりつけると、上のようになります
今思うとこれが良くなかったかもなんですが、サポート材の設定が面倒すぎたため、ほぼ自動で任せてしまいました
あとで気づいたのですが、自動設定だと鎖同士にサポート材がつけられてしまい、これが後々とれないことになります
加えて、鎖がそもそも小さい、というのも良くないポイントだと思います
今回は、一回目ということもあり、そのまま印刷しました
そして、できたものがこちら(上)
ぱっと見では、できてそうなんですよね
しかし実際には、できていません
こちらの動画をご確認ください
このように、鎖がそもそも鎖として機能しておらず、動画の最後には構造が崩壊しきっています
この印刷された構造においては鎖が互いにつながってしまっており、もはや柔軟性が失われてしまっています
この原因としては、自動設定されたサポート材が鎖同士をつないでいることや、鎖が小さく成形されにくくなったことが挙げられます
鎖同士をつなぐサポート材を外せば良いと思われるかもですが、結局はその鎖の小ささのため、手作業で外せるレベルにありません
成功に向けて
今回の問題は鎖だけです
そこで、次回は鎖をもう少し大きめにモデリングし、かつサポート材をできるだけ手動で設置します
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