【科学】 3Dプリント 製装置による微小な構造の制御

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3Dプリント できる簡単な構造で、太さ10 – 100 μm程度の三つ編みをつくる画期的な方法が報告されました

微小な三つ編み型ワイヤーは、高周波数の電磁波のアンテナとして活用できることから、5G時代を支える技術になりそうです

iPhoneの中身すらも、3Dプリント製の装置でつくる時代がくるかもしれません

何を 3Dプリント したのか

本報告のポイントを述べると

・3Dプリントによって、縦長の水路をもつデバイス(cmサイズ)をつくる。水路は多数存在するが、高さに応じて交差している。

・デバイスを水面にうかべ、デバイス内の水路にはディスクを浮かべる。ディスクにはワイヤーを接続することができる。

・表面張力の関係から、浮かんだ状態のディスクは水路の中央に自動的に配置される。特に、ディスクは狭い水路より広い水路に移動することを利用して、水路の形状によりディスクとワイヤーの位置を操作できる。

これらが鍵となります

3Dプリントされたデバイス内の形状

例として、図のような形状の印刷物が用いられています(実際より簡略化しています。デバイス内のディスクに接続されたワイヤーは、最終段階のみ表示しています)

ここで、このデバイスを水面につけたまま引き揚げます。すると、デバイス内のディスクは水面に浮かんだままですから、デバイスに対して下へ降りていきます。

このとき、デバイス内の壁面をうまく設計しておくことで、青・緑・赤と並んでいるディスクのうち緑のみを青側へひきよせることができます。

さらに、壁内の特殊形状を利用して、青と緑の位置を反転させることができます。さらに水面が下りていくと、今度は青が赤側へ引き寄せられ、再び交差を起こします。

そして最後に、ディスクが一番下までやってきて外側の通路の手前に配置された後、デバイスを沈めると、これらのディスクの位置を真上に戻すことができます。

この操作のポイントは、3つのディスクのうち、2つを交差させるという操作を2回行ったところです。これは、髪の毛を三つ編みにする方法と同じですよね。ですから、ディスクに細いワイヤーを接続しておけば、そのワイヤーを三つ編みできるというわけです。天才の発想ですね。

この論文にはわかりやすい動画がSupporting Videoとして付属していましたので、そちらも下に掲載しておきます。
以上、Natureに掲載された論文でした

参考

Zeng, C., Faaborg, M.W., Sherif, A. et al. 3D-printed machines that manipulate microscopic objects using capillary forces. Nature (2022). https://doi.org/10.1038/s41586-022-05234-7

【科学】3Dプリントによる超高強度チタン合金の形成

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金属の3Dプリント技術においてはよくチタン合金が利用されます

しかしながら、3Dプリントされたチタン合金はそれほど強くないという問題がありました

そこで、強靭なチタン合金を3Dプリントする方法が開発されました!

一般的な鋼鉄は600 MPa程度の引張強度ですが、本材料は1600 MPaを示します!

この強靭さは、3Dプリントであるからこそなせる構造と、その後の単なる加熱操作(約500 ℃)に由来しています

ただし、この3Dプリントに由来する構造とは、ナノレベルでの構造です

つまり、特殊な3Dモデルをもとに3Dプリントされた材料だから強いのではなく、3Dプリントしたことによってなんとナノ構造というレベルから強い材料を生成できたという話です

どんなナノ構造か

そのナノ構造とは、ナノスケールレベルで高密度な結晶構造です

この構造の形成を握る鍵は、3Dプリントで合金を成形する過程に秘められています

金属を3Dプリントするわけですから、金属の粉末をものすごく高温にして溶融・結合させています

これはLaser powder bed fusionと呼ばれており、その名の通りレーザーを使って高温にしているわけです

このような高温変化を材料に与えてやると、この合金の形成過程は、普通の製法とは異なった特殊な条件下となります

これを列挙すると、以下の条件が挙げられます

・大きい温度勾配(103-107 K m-1)

・早い固化速度(10-3 – 1 m s-1)

・加熱・冷却の繰り返し

このような製法をとることによって、材料中には多数の結晶欠陥(転位やdislocationともいう)が生じます
原子の並びが乱れた領域がたくさんあるということですね

ただし、この状態ではまだ材料は強くありません

むしろ、結晶欠陥は金属の変形が起きる原因となってしまうので、その動きを抑制することが必要です

というわけで、材料を加熱(約500 ℃)してあげるんですね

すると、この不安定な結晶欠陥が起点となって、高密度な結晶が形成されます

このような現象を析出硬化といいます

実は析出硬化は、飛行機の材料として知られるジュラルミンなどを強靭化させる方法として知られています

ただ、今回のチタン合金の析出硬化は、3Dプリントされた材料としては初ということになります

飛行機などが3Dプリントされる日はもう近いかもしれません!!

以上、Nature Materialsの最新の論文でした

参考

転位とは?

金属材料が変形するしくみと金属材料の強化方法について

Zhu, Y., Zhang, K., Meng, Z. et al. Ultrastrong nanotwinned titanium alloys through additive manufacturing. Nat. Mater. (2022). https://doi.org/10.1038/s41563-022-01359-2

Clarke, A.J. Unusual microstructures by 3D printing. Nat. Mater. (2022). https://doi.org/10.1038/s41563-022-01385-0

【無駄のないVtuber作製講座】Part 1-2: モデリング 編

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(本ページの動画バージョンはこちらです:Part1-5 モデリング 編

前回までは、Blenderのショートカットキー等についての説明でした

今回は、実際にキャラクターのモデリングを行ってみましょう

例として、ネンズ君がどうやってモデリングされたかを解説します

体全体のモデリング方法

ネンズ君は、上図のようにパーツ毎に作製されました

パーツというのは、胴体、顔、耳、手、足といった部位です

これらはオブジェクトとしては別々なものになっていますが、同一位置上に表示されることで、ネンズ君としての形状を成しています

一例として、胴体の作り方に着目します(図の下側)

前回の内容のおさらいになりますが、まずはキューブを出現させます

これは、Shift + A➡Mesh➡Cubeと選択することで、出現させられます

さらに、Tabキーを押すことで、編集モードに移行します

この編集モードでは、モデルの頂点を操作するなどといった、モデリングが可能となります

Eキーによる押し出しや、Gキーによる頂点位置の調整、Sキーによる拡縮を用いて胴体の形に近づけましょう

このとき、モディファイアであるMirrorを用いると、モデルを対称化させることができ、モデリングを効率化できます

モデルが胴体の形にある程度近づいたら、モディファイアからSubdivisionを選択しましょう

これによってモデルが細分化され、なめらかなポリゴンになります

便利なアドオンであるBool Toolを活用する方法

ネンズ君の胴と足、手、耳はやはり連結して動かなければなりませんから、メッシュ自体も連結させておきましょう

最初のモデリング段階で全てが連結されたモデルを作製してもよいですが、今回のケースでは、Bool Toolを利用して単一メッシュに統合します

これはBlenderの左上のEdit, Preference, Add-onsから有効にすることができます

バラバラのモデルをオブジェクトモードから全選択したあと、Bool ToolメニューからUnionを選択しましょう

編集モードで確認してみると、モデルが全て連結され、一つのオブジェクトとなっていることが分かります

ここで、Unionによって統合された箇所は、頂点数が余計に多くなる場合があります

必要に応じて頂点数を減らしましょう(ネンズ君の場合は、Bool Tool後そのままでもVtuberとして扱えていますので、この操作は飛ばしても問題なさそうです)

最後に、Bool Toolの差分機能を利用して、ネンズ君の口をつくってあげましょう

口に対応するメッシュを作製し、胴体のメッシュに差し込みます

そして①口の形状に対応するメッシュ、②胴体のメッシュという順番でそれぞれのオブジェクトを選択したあと、Bool ToolのDifferenceを選択します

これによって②のメッシュから①のメッシュが引き算され、胴体のメッシュに対して口の形状に対応する穴をあけることができます

最後に、こうして得られた単一のメッシュに対して右クリックからShade Smoothを適用します

これによって、なめらかなモデルとなったキャラクターを得ることができます!

Vtuber作製に関するモデリング編は、以上で終了です

次回からは、テクスチャを作製していきましょう!

【科学】ヒドロゲルを用いた金属の3Dプリント

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金属の3Dプリントって難しいイメージがありますよね

それは、従来では主には”金属を焼結させる”という方法しかなかったからです

そこで、これに対する解決策がNatureに掲載されました

「ヒドロゲルを3Dプリントし、これを金属に変換してしまおう」という解決策です

どういうことか、これを下の図に示します

まず、光重合という”液体の硬化反応”を用いてゲルという柔らかい物質を3Dプリントします

これは従来からある方法です

この反応は有機物質の反応ですから、これによって生成するものも有機物質(ポリマー)であり、やわらかいため、まだ金属とは程遠いです

しかしこの柔らかいポリマーはゲルといって、中に溶媒(液体)を含むことができます

そこで、その液体の中に、Cu(NO3)2といった金属イオンを導入することができます(NaClといった塩と同様のものと考えてもらって結構です)

すると、ここでできるのは、Cu2+という金属イオンが入ったゲルということになります

これはさらに700℃という高温条件に曝されることで、金属が揮発することはありませんから、形状を保ったまま金属酸化物に変換することができます(ただし収縮はおきます)

最後に、この金属酸化物(CuO)を還元してあげることで、対応する金属(Cu)を得られるというわけです

金属を光重合するのは当然不可能なわけですが、結果的にそれをやるのと同等の結果が得られたということになります。すごい!

また、この方法では、同じゲルから複数の金属がつくれるため、金属にあわせて反応条件を最適化する必要もありません!

解像度に関しても40 μmレベルであり、従来では困難だったレベルとなります

以上、新しい3Dプリントの革新的な技術でした

引用

Saccone, M.A., Gallivan, R.A., Narita, K. et al. Additive manufacturing of micro-architected metals via hydrogel infusion. Nature (2022). https://doi.org/10.1038/s41586-022-05433-2