【科学】3Dプリントによる超高強度チタン合金の形成

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金属の3Dプリント技術においてはよくチタン合金が利用されます

しかしながら、3Dプリントされたチタン合金はそれほど強くないという問題がありました

そこで、強靭なチタン合金を3Dプリントする方法が開発されました!

一般的な鋼鉄は600 MPa程度の引張強度ですが、本材料は1600 MPaを示します!

この強靭さは、3Dプリントであるからこそなせる構造と、その後の単なる加熱操作(約500 ℃)に由来しています

ただし、この3Dプリントに由来する構造とは、ナノレベルでの構造です

つまり、特殊な3Dモデルをもとに3Dプリントされた材料だから強いのではなく、3Dプリントしたことによってなんとナノ構造というレベルから強い材料を生成できたという話です

どんなナノ構造か

そのナノ構造とは、ナノスケールレベルで高密度な結晶構造です

この構造の形成を握る鍵は、3Dプリントで合金を成形する過程に秘められています

金属を3Dプリントするわけですから、金属の粉末をものすごく高温にして溶融・結合させています

これはLaser powder bed fusionと呼ばれており、その名の通りレーザーを使って高温にしているわけです

このような高温変化を材料に与えてやると、この合金の形成過程は、普通の製法とは異なった特殊な条件下となります

これを列挙すると、以下の条件が挙げられます

・大きい温度勾配(103-107 K m-1)

・早い固化速度(10-3 – 1 m s-1)

・加熱・冷却の繰り返し

このような製法をとることによって、材料中には多数の結晶欠陥(転位やdislocationともいう)が生じます
原子の並びが乱れた領域がたくさんあるということですね

ただし、この状態ではまだ材料は強くありません

むしろ、結晶欠陥は金属の変形が起きる原因となってしまうので、その動きを抑制することが必要です

というわけで、材料を加熱(約500 ℃)してあげるんですね

すると、この不安定な結晶欠陥が起点となって、高密度な結晶が形成されます

このような現象を析出硬化といいます

実は析出硬化は、飛行機の材料として知られるジュラルミンなどを強靭化させる方法として知られています

ただ、今回のチタン合金の析出硬化は、3Dプリントされた材料としては初ということになります

飛行機などが3Dプリントされる日はもう近いかもしれません!!

以上、Nature Materialsの最新の論文でした

参考

転位とは?

金属材料が変形するしくみと金属材料の強化方法について

Zhu, Y., Zhang, K., Meng, Z. et al. Ultrastrong nanotwinned titanium alloys through additive manufacturing. Nat. Mater. (2022). https://doi.org/10.1038/s41563-022-01359-2

Clarke, A.J. Unusual microstructures by 3D printing. Nat. Mater. (2022). https://doi.org/10.1038/s41563-022-01385-0

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